
🍷 5月|甘味とワインの距離感
──野菜の甘みがワインを台無しにすることもある?──
🔰 この回のテーマ
料理の中の「甘味」は、私たちが"美味しさ"と感じる大きな要素のひとつです。
しかし、ワインとのペアリングにおいては、ときにワインの酸味や渋みを浮かせ、味のバランスを崩す原因にもなり得ます。
今月は、野菜やみりん、砂糖などによる自然な甘味を含んだ料理を用いて、ワインの印象がどう変わるのかを観察します。
甘味と酸味・アルコール・ボディの相互作用に注目しましょう。
🍽 実験セットの準備
🍴 用意する料理(3種類)
-
玉ねぎのロースト(塩+オイル)
└ 加熱によって引き出される自然な甘みが特徴。 -
にんじんのグラッセ(みりん+塩)
└ 甘み+軽い旨味の構成。バターは使わず、和風寄りに仕上げる。 -
甘辛そぼろ(砂糖+醤油)
└ 明確に"甘さ"を感じる味付け。砂糖の分量を調整して味の変化をみる。
📝 ポイント:塩気や酸味とのバランスを崩さず、「甘味」が主役になるように整えましょう。
🍷 用意するワイン(3種類)
-
リースリング(オフドライ/やや甘口)
└ 柔らかい酸とほのかな残糖が、甘味と調和しやすい。 -
シャルドネ(辛口・樽なし)
└ すっきりした辛口。甘味とぶつかるかどうかを検証。 -
メルロー(赤・中程度の酸・柔らかな果実味)
└ 甘さと渋さのバランスを取る中庸的な赤。
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🧪 テイスティング手順
-
料理を単体で味見し、それぞれの甘さの強さと種類(野菜由来・糖由来など)を確認。
-
ワインを単体で試飲し、酸味・甘味・渋みのバランスを把握。
-
料理とワインを順にペアリングしながら、次の点を観察:
- ワインの酸が尖って感じられたか?
- 果実味やコクが失われたように感じたか?
- 料理の甘味とワインが一体化したか?
📝 ポイント:「甘味が強い料理」には、「やや甘いワイン」または「コクや果実味が豊かなワイン」が必要な場合があります。
💬 解説と考察
組み合わせ | よくある印象 | 理由 |
---|---|---|
玉ねぎロースト × シャルドネ | ワインの酸が浮く | 甘味に対抗できるボディがなく、バランスを崩す |
玉ねぎロースト × リースリング | 調和がとれて優しい | やや甘口で、料理の甘味と自然に同調 |
にんじんグラッセ × メルロー | 渋みがやや気になる | タンニンが甘味によって際立ち、ややバランスを欠く |
にんじんグラッセ × リースリング | 丸く調和する印象 | 甘味×甘味の共鳴と、酸の補正が同時に働く |
甘辛そぼろ × シャルドネ(辛口) | ワインが"酸っぱい水"のようになる | ワインの酸とアルコールが甘味に負け、果実味が失われる |
甘辛そぼろ × メルロー | 甘味と果実味が融合し、まろやか | 柔らかい赤が甘辛に寄り添い、味の一体感を生む |
✅ 「甘味がある料理」には、酸味や渋味の強いワインは避けるか、ワインにも"甘さ"や"厚み"を持たせるのがコツ。
🍳 レシピ例:にんじんの和風グラッセ
材料(2人分)
- にんじん:1本
- みりん:大さじ1
- 塩:少々
- 水:大さじ2
作り方
- にんじんを乱切りにし、鍋に材料すべてを入れる。
- 弱火で水気がなくなるまでコトコト煮る。
- 柔らかく甘くなったら完成。
📝 バターや砂糖は使わず、自然な甘みと軽い塩味の"和風"を意識しましょう。
🔁 応用ワーク(2週間の活用)
ワイン | 応用料理例 |
---|---|
リースリング(やや甘口) | 酢豚、酢味噌和え、白身魚の煮付け、オニオンスープ |
メルロー | 甘辛炒め物、照り焼きチキン、豚の味噌漬け、焼き肉のたれ系 |
シャルドネ(辛口) | 砂糖・みりんを控えた料理、スパイスが効いた塩味系ソテー |
🗝 「甘味がある料理に辛口ワインを合わせると失敗しやすい」──これは避けたい落とし穴のひとつ。
ワイン選びの前に、「料理にどれくらいの甘さがあるか?」を意識しましょう。
✍️ 記録シート(巻末)
- 甘味がワインにどう影響したか?
- 渋くなった or 酸っぱく感じたワインはあったか?
- 自分が好ましく感じた"甘さとワイン"の組み合わせは?
🔜 次回予告:6月|うま味+酸味+塩の三重奏
6月は「うま味・酸味・塩味が合わさった料理とワインの相性」を探ります。
だし+柑橘+塩など、"複合的な味"を持つ和食を例に、
ワインがどこまで寄り添えるかを試していく回です。
ペアリングの「複雑系」を学ぶ前半の山場となります。お楽しみに。